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No.
41
西暦
1986/11/17 
和暦
昭和61年11月17日 
掲載等
判時1234-116 
裁判所
東京高裁 
大分類
管理組合の運営 
中分類
管理組合の日常運営 
小分類
名誉毀損 
関連条文
民事訴訟法225条 
判決日
管理組合総会決議無効確認請求、管理費等請求事件、大阪地裁昭60(ワ)7586号(第1事件)・10830〜10841号(第2〜第13事件)、昭61.6.19民12部判決、第1事件却下、第2〜第13事件認容(確定)
当事者
《当事者》
 第1事件原告(選定当事者)、第10事件被告(以下、原告という。)
                 X1
 第2事件被告(以下原告という。) X2
 第3事件被告(以下原告という。) X3
 第4事件被告(以下原告という。) X4
 第5事件被告(以下原告という。) X5
 第6事件被告(以下原告という。) X6
 第7事件被告(以下原告という。) X7
 第8事件被告(以下原告という。) X8
 第9事件被告(以下原告という。) X9
 第11事件被告(以下原告という。) X10
 第12事件被告(以下原告という。) X11
 第13事件被告(以下原告という。) X12
 以上12名訴訟代理人弁護士    高 橋 典 明
 第1事件被告、第2ないし第13事件原告(以下、被告という。)
                 Y1管理組合
 上代表者理事長         Y2
 上訴訟代理人弁護士       永 吉 孝 夫
主文
【主文】 一 原告X1と同被告との間において、昭和60年5月31日開催の被告臨時総会においてなされた被告の役員選任決議の無効確認請求にかかる本件訴えは、これを却下する。
 二 上原被告間において、昭和60年10月29日開催の被告臨時総会においてなされた被告の役員信任決議の無効確認請求は、これを棄却する。
 三 原告らは、被告に対し、各原告ごとに別表(一)の当該事件欄記載の各金額及びこれに対する昭和60年6月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 四 訴訟費用は原告らの負担とする。
 五 この判決は第3、第4項に限り、仮にこれを執行することができる。
事実
【事実】 第一 当事者の求めた裁判
(第1事件)
 一 請求の趣旨
 1 昭和60年5月31日開催の被告臨時総会においてなされた被告の役員選任決議、及び(ロ)同年10月29日開催の被告臨時総会においてなされた被告の役員選任決議は、いずれも無効であることを確認する。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
 二 請求の趣旨に対する答弁
 1 請求の趣旨1(イ)の決議無効確認請求部分について
 (一) 本案前の答弁
 主文第一、第四項と同旨
 (二) 本案の答弁
 (1) 原告X1の請求を棄却する。
 (2) 訴訟費用は、上原告の負担とする。
 2 同1(ロ)の決議無効確認請求部分について
 主文第二、第四項と同旨
 (第2ないし第13事件)
 一 請求の趣旨
 主文第三ないし第五項と同旨
 二 請求の趣旨に対する答弁
 1 本案前の答弁
 (一) 被告の各本件訴えを却下する。
 (二) 訴訟費用は被告の負担とする。
 2 本案の答弁
 (一) 被告の請求をいずれも棄却する。
 (二) 訴訟費用は被告の負担とする。
第二 当事者の主張
 (第1事件関係)
 一 原告X1の請求原因
 1 当事者
 原告X1(以下原告X1と略す。)選定者らは、いずれも大阪府○○市○○4丁目46番1号所在「Y1」マンション(以下本件マンションという。)の区分所有者であり、被告は昭和60年5月31日、上マンション集会所で開催された「Y1管理組合設立総会」(以下、本件5月総会という。)で設立された管理組合である。
 なお、本件マンションの区分所有者の構成員は40名であり、本件マンションの管理規約である「Y1」管理規約(以下、本件規約という。)第25条により「区分所有者の議決権は各戸均等とする。」と定められており、上議決権総数は70であり、原告選定者らは各1の議決権を有している。
 2 被告の各総会決議
 (一)昭和60年5月31日Y1集会所において、本件5月総会が開催され、被告の役員として下記の者を選任する決議(以下、本件選任決議という。)がなされた。
 理事長    Y2
 副理事長   A
 会計担当理事 B
 理事     C株式会社
 同      株式会社D
 同      E
 監事     F
 同      G
 (二) 昭和60年10月29日、被告臨時総会(以下、本件10月総会という。)が開催され、本件選任決議で選出された被告の執行部を信任する旨の決議(以下、本件信任決議という。)がなされた。
 3 本件各決議の無効原因
 (一) 本件選任決議について
 (1) 総会の招集手続違反
 本件規約には、区分所有者の集会の招集手続について次の定めがある。
 第22条(集会の招集権者)
 「管理者又は議決権の4分の1以上を有する区分所有者は、集会を招集することができる。」
 第23条(集会の招集手続)
 「集会を招集する場合には、原則として集会日より5日前に会議の目的事項を示して各区分所有者に通知するものとする。ただし、緊急の場合にはこの日数にかかわりなく招集することができる。」
 ところが本件5月総会の招集通知は、総会開催日である昭和60年5月31日の前日の夜ないし当日になされており本件規約第23条に違反する。また本件5月総会は管理組合の設立を目的とするものであり、同条但書の「緊急の場合」にも該当しない。
 さらに、本件5月総会の招集者は、Y2、H、A、I、Eの5名であるが、上5名の議決権数は、Eが7、その余が各1であるから、議決権の合計数は11である。したがつて前記5名の議決権数は、総議決権数70の4分の1に満たず、上5名の招集は本件規約第22条に違反している。
 (2) 総会の定足数に関する規約違反
 本件規約第26条1項には、「集会は全議決権の3分の2以上にあたる議決権を有する区分所有者の出席がなければ議事を開き、議決をすることができない」旨規定されている。
 上条項によれば、総会の定足数は総数70の3分の2以上である47以上でなければならない。しかし、本件5月総会に出席した区分所有者の議決権総数は41に過ぎず、定足数に満たない。
 (3) かような招集手続に違反し、かつ定足数も満たさず開催されるという重大な瑕疵を有する総会においてなされた本件選任決議は、無効である。
 (二) 本件信任決議について
 (1) 被告の本件10月総会は、直接出席者8名(議決権数17)、委任状提出による出席者12名(議決権数26)をもつて開催されており、出席議決数は合計43であり、被告総会の定足数48に満たない。もつとも、上以外に議決権数を有するEが当日いつたん本件10月総会に出席したものの、同人は、議事に加わることなく退席し、議決にも一切関与しておらず、これを出席者として数えることはできない。したがつて、本件10月総会は定足数に欠ける。
 (2) かような定足数を満たさず開催されるという重大な瑕疵を有する総会においてなされた本件信任決議は無効である。
 4 よつて、原告X1と被告との間で、本件選任決議及び本件信任決議がいずれも無効であることの確認を求める。
 二 被告の本案前の主張(本件選任決議について)
 団体の内部紛争につき、その議決機関の決議の無効確認を求める訴えは、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められる場合には許容されるが、その議決機関の後の決議が有効になされたことにより前の決議がその後の法律関係に影響を及ぼしていないときは、確認の利益はない。
 本件でも、被告は、本件10月総会において、本件選任決議により選任された役員を信任する旨の決議をなしたのであり、原告は、本件選任決議の無効確認の利益を喪失したものである。
 三 被告の本案前の主張に対する原告X1の答弁
 請求原因3の(二)のとおり
 四 請求原因に対する認否
 1 請求原因1のうち、被告が昭和60年5月31日設立されたこと、同マンションの区分所有者の構成員が40名であること、その議決権総数が70であることはいずれも否認し、その余の事実を認める。本件マンション「Y1」は昭和50年3月に竣工され、その当初から管理規約は存在し、原告Y1選定者を含むすべての購入者が上管理規約を承諾して区分所有者となつたもので、被告は本件マンション竣工当初から存在していた。また被告の構成員は41名、議決権総数は71である。
 2 同2の事実は認める。
 3(一) 同3(一)(1)のうち、召集通知のなされた時期が原告X1の主張どおりであることは否認し、その余の事実は認める。
 (二) 同3(一)(2)のうち、本件規約第26条1項の規定内容が原告X1の主張どおりであることは認め、その余の事実及び主張は争う。本件5月総会においては、直接の出席者52、委任状提出による出席者14、以上合計66の出席があつた。
 (三) 同3(二)の事実及び主張は争う。本件10月総会には、原告主張の直接出席者、委任状提出による出席者のほかEも出席し、本件信任決議に加わつて、同人の有する7の議決権を行使したものである。
 五 被告の反論(請求原因3(一)(1)に対して)
 仮に本件5月総会において、招集通知の期日、招集者につき何らかの瑕疵があると評価されるとしても、原告選定者を含む全区分所有者に出席の機会が与えられ、圧倒的多数の出席によつて成立した本件5月総会においては、その瑕疵はきわめて軽微なものにすぎず、決議を無効にするものではない。
 (第2ないし第13事件関係)
 一 被告の請求原因
 1 被告は、建物の区分所有等に関する法律に定める管理組合で、マンション「Y1」の建物・敷地及び付属施設を管理する権利能力なき社団であり、原告らは、それぞれ、上マンションの各原告の肩書住所番号の部屋を区分所有する者で、いずれも被告の一組合員である。
 2 被告と原告らとは、原告らが被告の組合員となつたさい、被告の管理規約によつて、原告らが被告に対し、毎月25日までに翌月分の別表(二)記載の管理費用及び積立金500円を支払う旨約定した。
 3 被告と原告らとは、前項同様、被告が○○市に対して立替えて支払つた各原告使用分の水道料金につき、毎月25日までに支払う旨約定した。
 4 ところが原告らは、各原告ごとに別表(二)の当該事件欄記載の管理費、積立金、水道料金を支払わない。
 5 よつて、被告は原告らに対し、各原告ごとに当該事件欄記載の別表(二)の各未払金合計額すなわち別表(一)の当該事件欄記載の各金額及び上各金員の支払時期の後である昭和60年6月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
 二 原告らの本案前の主張
 1 第1事件の原告X1の請求原因2(一)及び同3(一)のとおり
 2 本件役員選任決議が無効である以上、Y2は原告の理事長ではなく、原告の代表権を有しない。したがつて、被告は、権利能力のない社団であるが、未だ代表者の定めがないことに帰するから、当事者能力を有さず、被告の本件訴えは却下されるべきである。
 三 請求原因に対する認否
 すべて認める。
 第三 証拠《略》
理由
【理由】 (第1事件について)
 一 特定団体の総会決議無効確認のごとき過去の事実ないし法律関係の存否ないし効力の確認を求める訴えは、その後の権利状態の変動が顧慮されていないため現在の紛争解決に資するところがないのが通例ではあるが、現在における個々の権利関係の確認よりもその権利関係の基礎をなす過去の事実ないし法律関係を確認し確定することが紛争の抜本的解決により適切かつ必要である場合には、上のような訴えについても確認の利益を認めることができる。本件においても、第2ないし第13件について被告から原告らに対する管理費等支払請求権の存否を確定する前提として、被告代表理事長Y2の代表権の存否が争われているのであり、上各事件及び今後生起することがありうる同種の紛争を抜本的に解決するためには、個々の紛争において被告代表者理事長の代表権の存否を個別的に判断し確定するよりも、上代表権を発生させた被告の総会における役員選任ないしこれに類する決議の効力の有無を確定する方がはるかに適切であることは、疑いを容れないところである。
 ただ、当該事実ないし法律関係は、あくまでも過去の一時点のものであるから、その後の時間的経過に伴つて新たな事実状態が発生することにより、過去の当該事実ないし法律状態が現在の権利ないし法律関係の確定に対して影響を及ぼさなくなることがある。このような場合には、上過去の当該事実ないし法律関係の確認はもはや紛争解決のために適切かつ必要とはいい難く、その確認の利益は否定されなければならない。本件においても被告の本件選任決議がたとえ無効であつたとしても、その後本件信任決議が行われている以上、被告代表者の地位は上信任決議に基づいて有効に確定されることとなり、本件選任決議の効力いかんはもはや現在における紛争解決に何ら影響力を持たなくなる。したがつて、本件選任決議無効確認の利益は、もつばら本件信任決議が無効である場合に限り存在するといえるのである。
 二 そこでまず、第1事件のうち本件信任決議の無効確認請求について判断する。
 1 《証拠略》によると、請求原因1の事実中、被告の構成組合員数が40名であること、議決権数が70であることが、それぞれ認められ、上各認定を覆えすに足りる証拠はない。そして、弁論の全趣旨によると、昭和50年3月の本件マンション竣工当時から「Y2」管理規約が存在し、原告Y1選定者らを含むすべての購入者が、上管理規約の存在及び内容を認識し了承した上で本件マンションの区分所有者となつたことを認めることができる。したがつて被告は昭和50年3月以降存在していたものと解するのが相当である。請求原因1のその余の事実は、当事者間に争いがない。
 2 同2(二)の事実については当事者間に争いがない。
 3 同3(一)(2)のうち本件規約第26条1項の規定内容が原告X1の主張どおりであることは、当事者間に争いがない。
 4 そこで、同3(二)について検討すると、被告の本件10月総会において、直接出席者8名(議決権数17)及び委任状提出による出席者12名(議決権数26)の出席者があつたという限度においては、当事者間に争いがない。
 原告は、上出席者以外に議決権数7を有するEがいたが、本件10月総会の各議事決議前に退席したため、同人を出席者と数えることはできず、本件10月総会は本件規約第26条1項の定足数を欠くにいたつた旨主張する。しかし、上主張にそう事実は本件全証拠によつてもこれを認めるに足りない。そして、上争いのない事実と、《証拠略》を総合すると、本件10月総会は、管理規約にしたがつて適法に召集されたところ、Eは、上招集に応じて昭和60年10月29日午後8時5分前にY1マンション集会所へ赴き、同所において同日午後8時から始まつた本件10月総会に出席し、同人の有する議決権数7を行使して第1号ないし第4号議案のすべての議決に参加し、いずれも賛成の意思表明をし、同日午後8時40分ごろに総会の閉会が宣せられるまで総会に出席し、同集会所にいたこと、本件10月総会における総会成立要件である定足数は、議決権数48であるところ、本件10月総会においては、上争いのない出席者の議決権数計43にEの議決権数7を加えた合計50の議決権数を有する者の出席があり、上定足数に欠けるところはなかつたことが認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。
 5 したがつて本件10月総会に定足数欠缺の瑕疵があつたものということはできず、ほかに本件10月総会においてなされた本件信任決議の効力を左右する事由についての主張立証はないから、本件信任決議を無効とすることはできない。
 三 上のとおり本件信任決議によつて被告執行部を信任する旨の意思確認がなされ、本件信任決議の効力を動かすに足るものがない以上、被告執行部役員の地位は本件信任決議にその基礎をおいて有効に確定されることとなるから、本件信任決議前になされた本件選任決議の無効確認の利益は失われるにいたつたというべきである。
 (第2ないし第13事件について)
 四1 原告らは、被告の本件5月総会に瑕疵があるため本件選任決議が無効であり、したがつてY2が原告代表者たる地位にないことを理由に、被告の原告らに対する請求にかかる訴えが不適法である旨主張する。しかしながら上Y2の被告代表者たる地位が本件選任決議でなく、本件信任決議にその基礎をおくものであることは第1事件関係において説示したとおりであり、原告らの上本案前の抗弁は理由がない。さらに、原告らの上本案前の抗弁に関して本件信任決議の効力が問題となるとしても、本件信任決議を無効とする瑕疵が認められないことは第1事件において説示したとおりであり、Y2の被告代表者たる地位は本件信任決議で確定したものといえるから、その代表権の欠缺を理由とする原告らの本案前の抗弁は、いずれにしても理由がない。
 2 被告の請求原因事実はいずれも当事者間に争いがない。
 (結論)
 五 以上のとおりであるから、第1事件のうち原告X1の本件選任決議無効確認請求にかかる本件訴えは、訴えの利益を欠くものであつて不適法であるから、その余の点について判断するまでもなくこれを却下し、同原告の本件信任決議無効確認請求は、理由がないのでこれを棄却し、第2ないし第13事件の被告の請求は、いずれも理由があるのでこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法89条、93条、仮執行宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 岨野悌介 裁判官 富田守勝 西井和徒)

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