基本的な事項に関する相談事例(Q&A)

財産の保全

QUESTION :

監事が監査のため、管理会社や会計担当理事に通帳の提示を求めることは可能ですか?また、理事長が求めることは可能ですか?


ANSWER :

 標準管理規約に「監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。」(第41条)とあるように、監事は少なくとも年に1度は会計監査をし、結果を通常総会に報告する義務があります。管理会社に経理を任せているのなら、当然通帳の提示を求めてチェックしなければなりません。また、標準管理規約では、会計担当理事に対しては、監事は、「いつでも業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況を調査することができる」としていますので(標準管理規約第41条第2項)、当該調査権を行使して通帳の提示を求めることも可能です。
  標準管理規約上、法人でない管理組合においては、理事長は「管理者」であり(区分所有法第25条第1項、標準管理規約38条第2項)、標準管理規約38条に規定される職務に関して、利益相反に該当しない限り、唯一、各区分所有者全員の代理人たる地位にあります。その他の理事は、これらの理事長の職務を一部委任分担されている者であり、たとえ会計担当理事が選任されていても、終局的な責任者として、会計担当理事の職務を指示・補佐・監督する義務があります。したがって理事長は、適宜管理会社や会計担当理事へ通帳の提示を求めて、チェックしておく必要があります。管理組合法人の場合にあっても、代表理事として理事長が置かれている場合には同様で すし、複数の代表理事が置かれている場合には、いずれの者にもその責務があると考えられます。

 

解説
 横領や不正な支出を防止し、管理組合の財産を保全するためには、適時適切に通帳等の残高の確認を行うことが必要です。横領等を抑止するためにも、毎月定期的に管理組合の理事又は監事の役員自らが預金通帳等により残高を確認することが、より効果的と考えられます。
  したがって、管理標準指針では、「毎月の預金の残高を通帳等により、理事又は監事が確認している。」ことを「標準的な対応」としています。なお、残高確認とあわせて光熱費等の支払い状況も確認すれば、その額の変動状況から漏水等の異常を発見することにも役立つなど、別の効果を期待することもできます。残高の確認は、預金通帳のコピーや残高証明による確認と併せて、定期的に預金通帳の原本確認も行いましょう。
  なお、会計担当理事が、自身が作成した偽造の銀行預金残高証明書を利用して、長年に亘る横領・着服行為による損害について、当時の監事及び理事長にも、原本確認を行わなかった職務上の善管注意義務違反があるとして、連帯してその責任が認められた判例(東京地判平成27年3月30日)があります。